うつ病の回復に焦りは禁物
ご覧になっていただきありありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で精神疾患の新薬の研究開発を行っていた医学博士の けんぞう です。
今日も科学的根拠に基づいた精神疾患関連の情報をお伝えいたします。
目次
はじめに
うつ病は治りやすい病気ですが焦りは禁物です。
うつ病では治すということではなく、元に戻るということだけを考えて下さい。
特に焦りは禁物で容易に再発し、回復を長引かせてしまいます。
うつ病の回復では誰もが焦ります
国内でもレクサプロなどの抗うつ薬を販売しているルンドベック社の調査によると、
うつ病による休職期間は平均は79日
だそうです。
しかし、一方では、3年たっても、4年たってもうつ病から抜け出せない患者も多くいます。
半年くらいで職場復帰できる患者がいる一方で、どうして長期間うつ病から抜け出せない患者がいるのか、うつ病に関する専門家によるとこの背景には、「復帰に対する過剰な焦り」があるといわれています。
うつ病の治療に「焦り」は禁物なのです。
うつ病で診察を受けると、医者は必ず、回復や職場復帰を焦らないようにと指導されますが、あなたの場合もそうだったのではないでしょうか。
また、家族についても、「患者を焦らせるような言葉や言動は避けて下さい」との注意を受けているはずです。
家族も早く回復して欲しい、早く社会復帰して欲しいと願うばかりに、ついつい焦ってしまうことが多いのですが、焦りはうつ病を長期化させる原因になってしまうのです。
うつ病の焦り度を診断する
下記の10問に、「はい」、「そうでもない」、「いいえ」で答えてみて下さい。
- 「早く仕事に復帰しなきゃ」ということが頭から離れない
- 「早くしないと自分の席ががなくなる」と心配
- 「こんな悠長に休んでいる場合じゃない」と焦ってしまう
- 「早く社会復帰しなければ!」と常に考えてしまう
- 「お金がない!」と考え出すと、いてもたってもいられない
- うつ病で空白があるのに、フルタイムの求人ばかり探してしまう
- 何とかしたいのに何もできない自分を嫌になってしまう
- 「働いていない自分はだめな人間だ」と思う
- 新しい職に就くときに うつ病療養中のことを履歴書に何と書くのか心配になる
- 自分は本当にどうしようもない人間だと思ってしまう
いかがでしたでしょうか?
「はい」が沢山ありましたか?
しかし、いくら考えても余り意味の無いことばかりです。
回復すれば全て解決することばかりです。
焦って心配しても、回復の手助けになならないのです。
焦りを感じないヒトはうつ病にはならない
うつ病の回復では本人が一番焦ります。
- 早く治さなければ周囲に迷惑がかかってしまう、、
- 早く社会復帰しなければ自分の席がなくなってしまう、、
といつも考えてしまうのです。
家族や職場の人も、
- そんなに焦って治そうとしなくていいから、ゆっくり休みなさい
と声を掛けても、
患者本人には、
- 本当は早く治ってもらいたいんだけど、、、
といわれたように感じてしまうのです。
逆に言えば、
うつ病だからゆっくり療養しようと思える人はうつ病にならない のです。
「仕事をしっかりしなければ」、「もう少し頑張らなければ」、、という気持ちの重なりががうつ病を引き起こしているのですから、「早く職場に戻らなければ、、」という焦りは回復を妨げてしまうのです。
うつ病の回復には休息が必須ですが、休息とは心身両面の休息を指すもので、焦りがある限り、心は一向に休まらないのです。
本人に、「焦ってはだめ」と行っても無理な話なのです。
焦りは心理的な生理現象ともいわれ、自分の意思でコントロールすることは非常に困難で、「汗をかくな」と言われても無理なことと同じで、他人から何といわれようと「焦ってしまう」のは仕方が無いのです。
周囲のヒトは、
「焦ってはダメだよ」
というのではなく、
「焦っても大丈夫だよ」
と、本人の焦りを認容するような見守りが必要なのです。
うつ病の患者本人も、
「明日は早いから、もう眠らなければいけない、、、」と思えば思うほど目が冴えてくるのと同じように、「焦れば焦るほど辛くなる」のですから、「焦るのは当然だ」と、焦りを認容するような気の持ち方が大事なのです。
うつ病の回復で焦りが禁物ですが、焦るのは当然なのです
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どうしてうつ病では回復を焦ってしまうのか
うつ病ではどうして、患者本人も家族も回復を焦ってしまうのでしょうか。
外傷の怪我や癌などの病気であれば患者も家族もそれほど回復を焦ることはないのですが、うつ病では患者本人も家族も回復を焦ってしまいます。
それは、身体には異常が無いが精神的な疾患という、うつ病の特殊性が影響していると思われます。
多くの内科的疾患では体調がすぐれず、本人も家族も病気という状態を納得し、認容するのですが、うつ病のような精神的疾患では、「気の持ちよう」、「ずるけている」、「体裁が悪い」というような、後ろめたい雰囲気がつきまとい、早く異常な状態から抜け出たいと焦ってしまうのです。
うつ病は治すな
「引きこもり」や「不登校」を一時は、「なまけ病」だと考えられていた時期がありました。
うつ病も、精神的な病気であることからその様に見られるこも多いのです。
身体のどこも悪くないのに仕事に行けない、身体のどこも痛くないのに家事が出来ない、、
こういった引け目が後ろめたさにつながり、焦りに繋がっているのです。
うつ病になるヒトでは共通した性格があるともいわれています。
- 精神的な弱さ
- 几帳面すぎる
- 完璧主義
というようなことですが、生まれ持って出来た性格を急に変えることはできません。
ですから、焦ってしまうのです。
うつ病を治そうと焦ってはいけません。
元の自分に戻る、それで充分なのです。
うつ病の回復のゴールは元の自分に戻ること
うつ病の70%は1年以内に回復する
うつ病は、適切な治療と充分な休養がとれれば回復するといわれている病気です。
一般的には、
- 3~6カ月で30%で症状が回復する
- 1年以内に70%が回復する
といわれています。
うつ病は高い確率で早期の「回復が期待できる病気であるのですが、再発することが多いのもうつ病の特徴です。
そして、再発を繰り返す毎に病期が長引き、症状も重くなる傾向にあるといわれています。
ですから、うつ病だと診断されたら、出来るだけ患者にストレスを与えず、患者自身も「治る病気だ」との考えを持つことが重要です。
うつ病の回復期は、一般的に3期に分けられます。
前駆期
うつ病になる前の時期だといっても良いでしょう。
溜まった仕事を抱えて焦ったり、様々な焦りを感じて状況で、うつ病になりかかった段階です。
身体や心のエネルギーが低下して疲れやすくストレスも溜まります。
今までは何でも無く出来ていたことができていたことが、辛くなったり出来なくなり、焦りや自責の念が生じてさらにストレスや不安がつのります。
この段階で病気だと気づけば回復も早いのですが、ほとんどの方は病気と思わない状態です。
極期
うつ病のさまざまな症状が明確に現れます。
この段階になると、友人はおろか家族にさえ助けを求めない(求めたくない)状態に陥ります。
本人も正常ではないことに気付き、周囲の人も今までと違う状態に気がつきますから、この段階の早期に受診してうつ病だと気が付けばでようやくこの段階で病気と認識して受診に至り、多くはこの時期に治療治療が開始されます。
回復期
治療が開始され、回復に向かいつつある段階です。
うつ状態が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら少しずつ回復していきますので、この時期には周囲のヒトも患者にストレスを与えないように注意する必要があります。
この時期には極期よりも自殺する人が多いといわれていますので、特に焦りを与えないように気長に接することが必要です。
中間期
うつ病は非常に再発しやすい病気です。中間期は回復した状態ではありません。
この時期に無理なストレスや焦りを与えると容易に再発することになりますから、中間期でも寛解したと思わず、まだ病気だと考えて下さい。
うつ病では寛解は期待できず、中間期が長引いている状態だと考えた方が良いでしょう。
うつ病は身体に痛みや不調は感じませんが精神的な病気です。
うつ病は回復が早い病気ですが、焦ってはいけません。
周囲も本人も、治すのではなく、元に戻ることを考えて下さい。
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