産後うつによる妊産婦の自殺が多い|毎日新聞
ご覧になっていただきありありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で精神疾患の新薬の研究開発を行っていた医学博士の けんぞう です。
今日も科学的根拠に基づいた精神疾患関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
今日の毎日新聞によると、
妊産婦の自殺が増えており、これは産後うつ病の影響
と考えられるのだそうです。
産後うつは妊産婦の10人に1人といわれ、
通常のうつ病の罹患率3~7%より非常に高いのです。
産後うつ病は防げない病気ではないのです。
妊産婦の自殺が多い!産後うつ病か|毎日新聞
2016年4月24日の毎日新聞によると、
東京23区で2005~2014年の10年間に自殺で亡くなった妊産婦が63名に上ったそうだ
これは、東京都監察医務院などの調査で分かったのだそうだが、毎日新聞によると、妊産婦の自殺件数についての正式な調査結果が公表されるのは初めてだそうだ。
この調査は、日本産科婦人科学会などの依頼に基づいて、き、東京都監察医務院と順天堂大学の産婦人科・竹田省教授が調査し、第68回日本産科婦人科学会学術講演会で発表されたもので、TBS News-iでも放映された。
自殺した63人の内訳は、
- 妊娠中 : 23人
- 出産後1年未満 : 40人
で、人数別では、
- 妊娠2カ月 : 12人
- 出産後4カ月 : 9人
が多かったそうです。
東京23区で2005~2014年の10年間における出産数件数は74万951人で、出産時の出血などでの妊産婦の死亡10万件あたり4.1人だそうだから、妊産婦の自殺件数は10万人当たり8.5人と、分娩による死亡者数の倍の率になり、妊娠・出産期の死因として自殺が最も多いことになる。
さらに調査では、
- 出産後1年未満の女性 : 6割が産後うつ病や統合失調症などの通院歴がある
- 6割中の50%の女性 : 産後うつ病と診断
また、
- 出産後1年未満」の6割、妊娠中6割では育児に悩むが受診を拒否
していた人もいたというのです。
10人に1人は産後うつになる
産後うつは、妊娠や分娩に伴うホルモンの変化が原因のうつ症状で、国内では出産した女性の10人に1人が産後うつなるといわれています。
日本産婦人科学会では、
妊産婦の自殺の原因は産後うつの影響もあるとみており、メンタルケアの充実などが急務だとして、来年改定する診療ガイドラインに、妊産婦の精神面をチェックし、産後うつになる危険性の高い女性を早期に見つける問診などの具体策を盛り込む方針とのことです。
竹田教授は、
「自殺がこれほど多いとは驚きだ。全国的な数を把握し、自殺のリスクが高い女性を医療と行政が連携してフォローする必要がある」と提言しています。
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問診で産後うつを早期発見|毎日新聞
2016年2月22日の毎日新聞によれば、
日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は、来年度の産婦人科診療ガイドラインの改定に当たり、産後うつに関する具体的な対策を盛り込む方針を固めたそうです。
具体的には、妊娠・出産後の早期に産後うつになる危険性が高い女性を見つけ出し、産後うつを予防することが大きな柱となる見通しで、10人に1がなるとされる産後うつを予防して、さらに、乳幼児への虐待や育児放棄を防ぎ、さらには妊産婦の自殺をも予防できるとしている。
現在の「産婦人科診療ガイドライン」における産後うつについては、
「精神障害が起こりやすいので注意すること」
などの簡単で具体性のない記載にとどまっているが、改定案では妊産婦の精神ケアでは先進国といわれるイギリスにおける取り組みなどをも取り入れる方針だ。
産後うつの早期発見
産後うつの早期発見においては、
- 出産後2週目
- 出産後1カ月目
にメンタルチェックを行い、産後うつの危険性が高いと判断された妊産婦には精神科医の受診を促すこととしている。
メンタルチェックでは、国際的に普及している英国の「エジンバラ産後うつ病質問票」などを活用する模様だ。
エジンバラ産後うつ病質問票
エジンバラ産後うつ病質問票とは、下記の10項目について、
「過去7日間に感じたことに最も近い答え」を、
- ( 0 )いつもと同様にできた
- ( 1 )あまりできなかった
- ( 2 )明らかにできなかった
- ( 3 )全くできなかった
のように4段階で回答し、9点以上をうつ病の可能性ありとスクリーニングする問診票です。
- 笑うことができたし、物事の面白い面も分かった
- 物事を楽しみにして待った
- 物事がうまくいかない時、自分を不必要に責めた
- はっきりした理由もないのに不安になったり、心配したりした
- はっきりした理由もないのに恐怖に襲われた
- することがたくさんあって大変だった
- 不幸せな気分なので、眠りにくかった
- 悲しくなったり、惨めになったりした
- 不幸せな気分だったので、泣いていた
- 自分自身を傷つけるという考えが浮かんできた
もし気になるのであればやってみたらいかがでしょうか。
産後うつが増えている
産後うつは、
- 妊娠や分娩に伴うホルモンのバランスの急激な変化
- 育児への不安
- 社会的孤立
など多様な原因で発症するうつ病の中の一つで、通常は分娩後2週から4週間で正常に戻るのですが、そのままうつ病に移行する女性も少なくはないのです。
厚生労働省の発表によると、
- 2001年 : 13.4%
- 2005年 : 12.8%
- 2009年 : 10.3%
と10%程度で推移しているとされていますが、実際にはもっと多いのではないかと観られています。
一般の人がうつ病に罹病する率は3~7%といわれていますから、産後うつの罹病率はうつ病の罹病率より非常に高いのです。
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