アルコール依存症はうつ病になるのか?

うつ病でアルコール依存症のヒトが多いことが多くの疫学調査で明らかになっています。

また、アルコール依存症でうつ病のヒトも多いのです。

うつ病ではアルコール依存になりやすいのか?

アルコール依存はうつ病になりやすいのか?

うつ病が先か、アルコール依存症が先か、

うつ病とアルコール依存の関係を調べてみました。

 

アルコール依存症ではうつ病になるのか?

アルコール依存症の中にうつ病が多いという多くの報告があります。

また、うつ病の中にアルコール依存症が多いのも事実です。

アルコール依存症とうつ病の合併率は10%程度ではないかといわれています。

アルコール依存症が先か?うつ病が先か?

 

それでは、

  1. アルコール依存症がうつ病を誘発するのか?
  2. うつ病ではアルコール依存症になりやすいのか?

どちらが先なのでしょうか。

 

どちらが原因で、どちらが結果であるのか、2通り考えられます。

  1. アルコール依存症が先 : アルコールは抑制的な飲み物、多飲すれば抑うつ的になる
  2. うつ病が先 : うつ病では気分を紛らわせたいためアルコールに逃げる場合がある

と、いずれの場合も起こりやすいケースです。

 

1の場合には、「不安な気分から逃れたい」「早く眠りたい」「気分をハイにしたい」などの理由から、アルコールを多量に摂取してしまいますし、

2の場合には、小量のアルコールは気分を高める作用があるのですが、アルコールから冷めた場合には孤独感や絶望感を良そう強めてしまうのです。

 

睡眠前にお酒を飲むとグッスリ眠れるとナイトキャップをする人も多いのですが、実は、就寝前のアルコールは睡眠の質を低下させ、睡眠障害をかえって悪化させてしまうのです。

 

アルコール依存症の判断基準

なお、アルコール依存症の診断は飲酒量ではなく、飲酒パターンによるのです。

  1. 飲酒の時間や量が常識的基準から外れいる(昼から飲むなど)
  2. 毎日の飲酒がパターン化して習慣になっている
  3. 「今日は1杯でやめよう」と思っていてもできない
  4. これ以上飲むと離婚や解雇などといわれても止めることができない
  5. 焦燥感や不眠を解消するために飲酒する
  6. 水よりも酒の方が飲みやすい
  7. いつでも飲めるように酒の保管を怠らない
  8. 付き合いや趣味よりも酒の方が大事だと思う

これらに当てはまればアルコール依存症の疑いがあります。

 

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うつ病ではアルコールは避けた方が良い

野村総一郎氏の「内科医のためのうつ病診断」(医学書院)では、

もともと「うつ病」があって、そこからアルコールに依存していく人がいる一方で、逆にアルコール依存によって「うつ状態」になっていく人々もいます。
飲酒の習慣が始まった当初は、飲むことで「ふつう」の気分が「ハイ」な気分へと移行しますが、問題飲酒の段階に至ると、アルコールが入っているときは「ふつう」の気分でいられても、アルコールが抜けると「落ちこみ」に襲われるようになります。

と記されています。

本当にアルコール依存症はうつ病になるのでしょうか?

 

アメリカにおける精神科医の診断マニュアルには、

「飲酒している患者でうつ病を疑う場合には、断酒をし、最低4週間経過を見てから診断せよ」

と指示しているそうです。

 

アルコール依存症に起因してうつ状態になっている場合には、アルコールを断ってしばらくするとうつ状態が改善するそうです。

断酒後にもうつ状態が続く場合には、うつ病の併発を疑い、アルコール依存症の手当と平行して、うつ病の治療を始める必要があるのです。

 

うつ病の場合には、アルコールの摂取で一時的な気晴らしになるのですが、うつ病の症状はさらに悪化させるといわれています。

さらにアルコールは心理的苦痛を強め、自分への攻撃性も高める作用があることから、アルコールの摂取は自殺のリスクを高めます。

うつ病の治療で処方される、抗うつ薬や抗不安薬は、飲酒すると効果がでにくくなってしまいますから、アルコールの摂取を避けるべきなのです。

 


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アルコール、うつ病、自殺の三角関係

我が国の自殺者は年間3万人を超え、先進諸国の中では非常に多い数字です。

しかし、WHOの基準では「変死者の1/3は自殺と数える」ということになっていますが、

我が国では遺書がなければ全て変死扱いとしているため、実際の自殺者はもっと多いのではないかといわれています。

 

さて、平成19年度~21年度に、「自殺予防総合対策センター」が行った調査では、

自殺者の20%以上が飲酒問題を抱えていた

そうです。
具体的には、自殺する前の1年間にアルコールに伴う問題があったそうなのです。

自殺者の多くは40~50代の男性有職者ですが、この年齢層の男性ではうつ病の罹患率も高く、

  • アルコールに伴う問題
  • 精神的疾患

と、2つの問題を抱えており、実際には4割以上のヒトがうつ病などで精神科を受診してたそうです。

 

また、別の調査でも、

  1. アルコール依存症者では自殺念慮(願望)が高い
  2. アルコール依存症者では自殺企図を経験している者が多い

こともわかっています。

 

誰しもが、「死んでしまいたい」と思ったことは有ると思います。

しかし、実際に自殺にまで踏み切るヒトは少ないし、最後の一線を越えることは希です。

「死にたい」ということと「自殺する」という間には大きな隔たりがあり、理性が踏み留まらせるのです。

アルコールは脳の機能を抑制することで、思考や判断能力を低下させ、自殺へと背中を押してしまい、最期の一線を踏み越えさせてしまうのです。

アルコールは長期的には抑うつ状態に導き、さらに、飲酒に伴うトラブルにより周囲との関係もが悪化し孤立感を深めてうつ病に陥る可能性も大きいのです。

さらに、うつ病を併発すると、自殺のリスクをますます高まることになるのです。

 

アルコール依存症は「慢性自殺」とも呼ばれますが、背

景にはうつまでに至らずともアルコールによる抑うつ状態があるのです。

うつ病での自殺防止のためには、うつ病対策だけでなく、飲酒対策も欠かせません。

 


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