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    Categories: うつ病の薬物療法

8割の患者は抗うつ薬が効かない治療抵抗性

国内においてSSRIが発売されてから12年が経過し、うつ病の治療では7種類の抗うつ薬が使用可能となっています。

これらの多種の抗うつ薬が利用可能になっても、

うつ病患者の30~40%で抗うつ薬の効果が見られない

ということが、第107回日本精神神経学会学で明らかにされています。

 

抗うつ薬で効果が見られないうつ病患者は、

治療抵抗性患者

といわれるのですが、

国内のうつ病治療ガイドラインでは、

  • 治療抵抗性の患者に対する第二選択薬

などについては明確なガイドラインがないのです。

さらに、

  • 何種類の抗うつ薬で効果がなければ治療抵抗性なのか?

なども明確になっていないのです。

アメリカの研究グループは、

治療抵抗性患者の定義について報告しているのでご紹介したいと思います。

 

 

抗うつ薬が効かない治療抵抗性患者の定義

アメリカでは、抗うつ薬で効果がない治療抵抗性患者のことを、

Treatment-Resistant Dpression(TRD)と日本語と同じように言い表します。

 

アメリカにおいても治療抵抗性患者の定義は、

  1. 治療薬への反応
  2. 治療薬の用量
  3. 治療期間

で評価するとしているのですが、実際には、一定の基準は定められていません。

 

そこで、アメリカのヤンセン研究所の研究グループは、

治療抵抗性うつ病を定義しようと

診療報酬請求データや診療録などのリアルワールドエビデンスを解析し、

うつ病の治療効果を評価しDepression and anxiety誌に掲載しました。

 

Finding treatment-resistant depression in real-world data: How a data-driven approach compares with expert-based heuristics.

CONCLUSION :
The definition that best discriminates between subjects with and without TRD considers number of distinct antidepressants (≥3) or antipsychotics (≥1) in the last year.

 

詳しく読む ⇒ 原著論文

 

研究では、

1剤以上の抗うつ薬を服用している成人のうつ病患者を対象として、

  • 治療抵抗性でないうつ病患者 : 3万3,336例
  • 治療抵抗性のうつ病患者   :    3,566例

を分析したのです。

 

試験登録開始日から、

  1. 3ヵ月
  2. 6ヵ月
  3. 12ヵ月

の時点において、

  • 抗うつ薬の数
  • 抗精神病薬の数
  • 心理療法の数

を評価し、治療効果を算出したのです。

 

その結果を簡単に要約すると、

治療抵抗性うつ病患者は、

過去1年間に、

  • 3種類以上の抗うつ薬を使用した患者
  • 抗精神病薬を1種類以上使用した患者

と定義され、

調査したうつ病患者の15.8%が治療抵抗性うつ病患者だった

と述べています。

 


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国内の抗うつ薬は効かない

初めに書きましたように、

第107回日本精神神経学会学の教育講演で関西医科大学の加藤正樹教授は、

30~40%のうつ病患者では十分に改善されない

と、治療抵抗性うつ病患者がかなりの数に上ることを明らかにしています。

 

さらに、獨協医科大学越谷病院こころの診療科の井原裕教授は、

抗うつ薬が効くのは20%で8割の患者に無意味

だと述べています。

 

詳しく読む ⇒ AERAdot.

 

加藤教授によれば薬の効果を示すNNTという指標を用いて抗うつ薬の効果を比較したすると、

 

2009年の論文では、

代表的な抗うつ薬であるSSRI系のNNTは7~8

すなわち、

抗うつ薬で効果があるのは7~8人の中で1人だというのです。

 

2012年の論文では、

NNTは3~8であることから3~8人に1人しか効果がない

というのです。

 

両論文の中間のNNTをとってNNT5とすれば、

  • 抗うつ薬が効くのは患者の20%であり
  • うつ病患者の8割では抗うつ薬は効果がない

というのです。

 

NNTとは?

NNTとはnumber needed to treatの略で、治療必要数といいます。

簡単にいえば、1人に効果が現れるまでに何人に投与する必要があるのかを表す数字です

1)治療Aでは10%の有病率が5%に減少した

2)治療Bでは50%の有病率が25%に減少した

このいずれも有病の減少率は50%ですが、絶対的な数字では差があります。

そこで、1人に効果が現れるまでに何人に投与する必要があるのか(NNT)を比較すると、

1)治療Aでは20人に治療すれば1人に効果が現れた

2)治療Bでは4人に治療すれば1人に効果が現れた

ということで、圧倒的に治療Bに高い効果があると判定されるのです。

 

加藤教授は、

日本うつ病学会は2012年にガイドラインを発表して以降、

軽度うつ病に対する積極的な抗うつ薬投与を推奨していない

に関わらず、

 

抗うつ薬の投与が減っておらず、

その背景には製薬会社の販売戦略がある

と指摘しているのです。

 

詳しく読む ⇒ 抗うつ薬は8割の患者では効果がない

 

抗うつ薬が効かない患者は治療抵抗性患者と言われるのですが、

これはあなたが悪いのではありません。

抗うつ薬に効果がないのです。

抗うつ薬を飲み続けても改善がないときにはセカンドオピニオンを受けてみることも良い方法です。

 


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