X
    Categories: うつ病と糖尿病うつ病の薬物療法

うつ病の治療薬で糖尿病になった

ご覧になっていただきありありがとうございます。

臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で精神疾患の新薬の研究開発を行っていた医学博士の けんぞう です。

今日も科学的根拠に基づいた精神疾患関連の情報をお伝えいたします。

 

はじめに

糖尿病の人はうつ病になりやすいということは多くの疫学研究で明らかになっています。

しかしまた、

うつ病の人が糖尿病になる割合も非常に多い

ことも明らかになっています。

その人るの原因として、

うつ病の治療薬は食欲に影響するものがあるからだといわれています。

うつ病も大変ですが糖尿病も大変な病気です。

糖尿病のリスクが高い抗うつ薬とはどんな種類の薬なのかご存じですか?

 

 

うつ病では糖尿病になりやすい

糖尿病では、うつ病を併発しやすいといわれています。

国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の報告によると、

  • 糖尿病でうつ病を併発 : 11.4%
  • 糖尿病でうつ病の疑い : 31.0%

だったそうです。

厚生労働省によるうつ病の生涯罹患率は3~7%と発表されていますから、糖尿病患者でのうつ病の併発率は非常に高いといえます。

うつ病の治療薬は糖尿病を発症させる

糖尿病ではうつ病になりやすいのですが、逆にうつ病の人も糖尿病になりやすいのです。

今年の1月ですが、アメリカのZucker Hillside病院の研究グループは、「若年者への抗精神病薬の長期処方は糖尿病リスクを有意に高める」という論文をJAMA Psychiatry誌に発表しています。

Type 2 Diabetes Mellitus in Youth Exposed to Antipsychotics A Systematic Review and Meta-analysis ⇒ 詳しく見る

これは、若年者に抗精神病薬を長期投与した時に2型糖尿病を発症したと報告している多くの研究論文から、抗精神病薬と糖尿病発症の関係を解析したのです。

研究では、2~24歳までの抗精神病薬を服用している患者を追跡していた論文を元に解析したのです。

抗精神病薬服用群 : 134万2121人(平均年齢は13.8歳、男性55.7%)

健常人群     : 29万8803人(平均年齢13.8歳、男性52.6%)

精神病の種類は、

  • 注意欠損多動障害(ADHD) : 46.9%
  • うつ病 : 26.9%
  • 双極性障害 : 16.2%

などでした。

1,000人当たりの2型糖尿病発症者数は、

  • 抗精神病薬服用群 : 5.72人
  • 健常人群     : 2.15人

 

と、抗精神病薬服用群での糖尿病発症数は健康人の倍だったのです。

 

処方されていた抗精神病薬は、

  1. リスペリドン : 41.7%
  2. クエチアピンフマル酸 : 26.6%
  3. アリピプラゾール : 17.2%
  4. オランザピン : 10.2%

などでしたが、

オランザピンを処方されていた男性における糖尿病発症が最も高かったそうです。


Sponsored Link

糖尿病に注意すべき抗うつ病薬

うつ病で糖尿病を発症しやすいことは国内でも報告されているのですが、

その理由は、

  1. 運動不足
  2. ストレスによる過食
  3. 生活の乱れ

だといわれています。

うつ病になると多くの患者では引きこもったり活動量が顕著に減少し、さらに、生活のパターンが昼夜逆転したり、睡眠不足に陥ったり、生活の質が極度に低下し、生活習慣病である、肥満や糖尿病を発症しやすくなるのです。

さらに、上に紹介したアメリカの研究論文のように、抗うつ薬の副作用により体重増加が起こり、それが糖尿病につながる可能性も指摘されています。

抗うつ病で糖尿病と関連しそうな治療薬

上の論文では、「オランザピンを処方されていた男性における糖尿病発症が最も高かった」と報告されていますが、オンザピンは日本ではジプレキサの商品名で販売されている、双極性障害の躁症状とうつ症状の両方の症状を改善するといわれる抗うつ病薬です。

抗うつ病の治療薬の中で、糖尿病に注意した方が良いと思われるのは、抗ヒスタミン薬とセロトニン受容体遮断作用薬で、具体的には、

  • リフレックス(特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
  • パキシル(セロトニンの再取り込みを阻害抗うつ薬)
  • トリプタノール(抗ヒスタミン・三環系抗うつ薬)

です。
抗うつ薬と食欲増加
セロトニン受容体遮断作用薬も抗ヒスタミン薬もセロトニンを阻害する薬です。

セロトニンは満腹中枢に作用して、摂食行動をストップさせる働きがあるのですが、セロトニン受容体遮断作用薬や抗ヒスミタミン作用薬の服用により、視床下部にある満腹中枢への食べる行動を抑えるヒスタミンの刺激がなくなるためと考えられていますが、最近では、過剰なストレスによる食欲増進に関与しているグレリンというホルモンの分泌が高まるからだともいわれています。

 

うつ病を発症すると自分では生活行動のコントロールが出来なくなることが多いのです。

生活パターンの乱れは生活習慣病の発症に繋がります。

また、抗うつ薬には食欲を亢進させたり、体脂肪の燃焼を抑制したりする副作用もあり、さらに糖尿病の発症を高めてしまいます。


Sponsored Link

 

phc50823: